整流管を使用して、12AX7-EL32シングル真空管アンプを設計してみた。2013/11/14 00:35

前回のブログで、随分と久しぶりに真空管アンプを設計してみた訳ですけど。。。

実を言いますと、真空管アンプビルダー同志の方より、『ブログを毎日チェックしてるけど、最近は真空管のネタないよねー』と言われていました。

私 『すみません。ここ最近アンプを作ってなくて。。。(汗』
同志 『いや。べつに作らなくてもイイから、回路図をアップしてよ。

というフォローを受けていました。


その気持ちは良く判ります。真空管アンプを作る人間というのは、自分のアンプを作る為のヒントとかアイデアとかキッカケを、いつも探しているのものです。

ネット上の回路図を見て、『ああ。なるほどなー。ここの部分はそうするのか!そういう考え方もあるのかっ!?』というように、自分が現在抱えてる問題の解決のヒントというか、ブレイク・スルーするためのアイデアを模索していたり、アンプ製作のモチベーションを鼓舞する為のキッカケを、いつも探しています。


真空管アンプに限らず、モノ作りする人間はみんなそうかもしれません。


私個人的には、真空管アンプ関連のHPとか掲示板はあまり覗かないです。なんせこんな残念なブログを書いているので。。。(大汗

ていうか、私の作るアンプはヘッドフォンアンプ兼用の出力の小さいアンプですので、もともと書籍やネット上に作例がないですし、回路もシンプルな 抵抗結合・局部帰還・シングル二段増幅 ですのでわざわざ調べる程のものでもありません。ひたすら自分で考えてロードラインを引くだけです。まあでも、そのおかげで真空管アンプを設計できるようになったのですが。。。(汗



そんな訳で、前回 EL32 シングル真空管アンプを設計する為に過去のデータを探していたら、整流管を使用した12AX7-EL32シングル真空管アンプの回路図も出てきたので、今回はそれを掲載する事にしました。



整流管を使用したアンプの回路図のベースとなった回路は、以前ブロログに掲載した5755-6CH6-EZ80 シングル真空管アンプだと思います。

5755-6CH6-EZ80シングル真空管アンプ
http://valvolerosso.asablo.jp/blog/2012/12/08/6654745


5755-6CH6-EZ80シングル真空管アンプ
5755-6CH6-EZ80シングル真空管アンプ 整流管 Ver.

RAYTHEON 5755 Triode
RAYTHEON 5755 の特性図 整流管 Ver.

6CH6の三結特性図 (6CH6 Triode Connection)
6CH6の三結特性図 (6CH6 Triode Connection) 整流管 Ver.

5755-6CH6(CV4055)-EZ80 Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier) using Full-Wave Vacuum Rectifier testing circuit 両波整流管を使用した6CH6(CV4055)真空管アンプ回路図
5755-6CH6(CV4055)-EZ80 Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier) using Full-Wave Vacuum Rectifier testing circuit 両波整流管を使用した6CH6(CV4055)真空管アンプ回路図



上記アンプの初段を 12AX7 に変更したモノが、次に掲載する回路図です。

ていうか、初段が 12AX7 である回路が最初の回路で、そもそもこの回路を出発点にして、書籍『真空管ギターアンプの工作・原理・設計』を読んで、ステレオアンプを自作する場合のヒント として、いろいろな回路図をブログに掲載したのでした。。。(汗


書籍『真空管ギターアンプの工作・原理・設計』を読んで、ステレオアンプを自作する場合のヒント
http://valvolerosso.asablo.jp/blog/2012/11/06/6625419


12AX7の特性図 (6AV6/12AX7/6N2P-EV)
12AX7の特性図 (6AV6/12AX7/6N2P-EV) 整流管 Ver.
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/093/6/6AV6.pdf

12AX7-6CH6(CV4055)-EZ80 Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier) using Full-Wave Vacuum Rectifier testing circuit 両波整流管を使用した6CH6(CV4055)真空管アンプ回路図
12AX7-6CH6(CV4055)-EZ80 Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier) using Full-Wave Vacuum Rectifier testing circuit 両波整流管を使用した6CH6(CV4055)真空管アンプ回路図


なんだか話がゴチャゴチャしていますけど、(私自身も過去データを発掘してちょっと混乱した)のですけど、上掲載の回路図の出力段を EL32 にしたものが、本日のテーマの12AX7-EL32(CV1052)-EZ80シングル真空管アンプです。


EL32の三結特性図 (EL32 Triode Connection)
EL32の三結特性図 (EL32 Triode Connection) 整流管 Ver.
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/154/e/EL32.pdf

12AX7の特性図 (6AV6/12AX7/6N2P-EV)
12AX7の特性図 (6AV6/12AX7/6N2P-EV) 整流管 Ver.
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/093/6/6AV6.pdf

12AX7-EL32(CV1052)-EZ80 Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier) using Full-Wave Vacuum Rectifier testing circuit 両波整流管を使用したEL32(CV1052)真空管アンプ回路図
12AX7-EL32(CV1052)-EZ80 Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier) using Full-Wave Vacuum Rectifier testing circuit 両波整流管を使用したEL32(CV1052)真空管アンプ回路図


結局、5755-6CH6-EZ80 シングル真空管アンプは、その後にトロイダル電源トランスを使用したカラーアルマイト仕上げのシャーシを新設してしまった(!)ので製作しませんでしたし、整流管仕様のEL32アンプも今後製作予定はない!のですが、冒頭で書きましたように、真空管アンプビルダーの皆様のご参考になるかもしれませんので掲載する事にしました。


MJとかラ技、あるいはネット上にある回路は、電源トランス、出力トランス、真空管が作例によってみんな異なって別種のアンプですけど、初心者の方が検討する場合は、あえて電源トランスと出力トランスと初段(あるいは出力段)の動作点を共通にした方が横並びで比較できるので判り易いかな?と思います。


例えば、ここまで掲載した回路のように、

①出力段を 6CH6 にして、初段を 5755 → 12AX7 → 12AT7 にする。
②初段を 12AX7 にして、出力段を 6CH6  → EL32 にする。

前回ブログのトロイダル電源トランスを使用した回路のように、

③初段を 12AX7 にして、出力段を 41、42  → EL32 にする。


みたいな感じで、真空管アンプの設計は、アンプの一部分を変更して段階的に学習していくのが理解が早いと思います。実際のところ私自身も、初段あるいは出力段のどちらか一方を部分的に改造することで、徐々に真空管アンプの構造を覚えていったような気がします。


ついでですので、初段を12AT7にして出力インピーダンスを改善した回路図も掲載しておきます。。。(汗


12AT7-6CH6-EZ80 Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier) testing circuit 回路図
12AT7-6CH6-EZ80 Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier) testing circuit 回路図

12AT7 ( ECC81 ) Triode
12AT7 ( ECC81 ) Triode
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/030/e/ECC81.pdf



本日の記事は、過去に掲載した記事のまとめみたいな感じになってしまいましたが、このブログをご覧の皆様のヒントとかアイデアとかキッカケになって頂ければ幸いです。(^O^)


実は正直に告白しますと、先日、柏葉幸子 霧のむこうのふしぎな町 帰命寺横丁の夏 梨木香歩 冬虫夏草 上橋菜穂子 物語ること、生きること を読んで、創作のエネルギーを貰った(テツさんは個人的に“エナジードレイン”(※注1)と呼んでます。)ので、本日のブログ記事を書く事にしました。

言うなれば、『エナジードレインのお裾分け』です。(笑)


(※注1)エナジードレイン
RPG用語では相手の生命力を頂く行為ですけど、テツさんは個人的に“他者様の作品に感銘を受けてそこから創作のエネルギーを貰い、作品制作のモチベーションをアップさせる行為という意味で使用しています。


自分で言うのもナンですけど、私自身の真空管アンプ制作って、2010年~2011年頃が一番脂が乗ってた(!)んですけど、それって、ニトロプラス 装甲悪鬼村正 をプレイしたり、上橋菜穂子 『獣の奏者』 Ⅲ探求編 Ⅳ完結編 & 外伝 刹那 を読んで、魂が震えるほど超、超、超~っ感動!して、エナジードレイン充電率200%くらいになった(!?)からなんだと、今にして思います。。。(汗


最近、魂が震えるほどの感動がない!ので、モチベーション下降気味なんですよねー。とほほ。。。


( なんじゃそりゃ。。。(^_^; )



追伸


思い起こしてみれば、カラーアルマイト処理シャーシを作ったのって、ちょうど ガールズ&パンツァー を観ていた時期ですよね。そういえば。。。(汗

ガールズ&パンツァー熱い展開に燃えた!とかブログに書いた時に、カラーアルマイト・シャーシを新設したんですよねー。(コレ↓)

真空管ヘッドフォンアンプを、みっくみくにしてやんよ♪
http://valvolerosso.asablo.jp/blog/2013/04/06/6769892


いやホント。ガルパンの胸アツな展開にエナジードレインを注入させて頂きました!  ( おい。。。(^_^; )

ていうか、そもそもトロイダルトランスの真空管アンプって、電源トランスをシャーシに内蔵すれば、谷川柑菜 だけじゃなくてⅣ号戦車D型が真空管アンプの上に載るかも!?とか思いついたからだったと。。。(汗

PLUM 谷川柑菜 だけじゃなくて、実はⅣ号戦車も?
http://valvolerosso.asablo.jp/blog/2012/12/23/6668016


なんか胸アツな作品に触れると俄然ヤル気になるらしいです。。。(大汗


トロイダル電源トランスで12AX7-EL32シングル真空管アンプを設計してみた。2013/11/10 16:49

なんだか随分と久しぶりのような気がしますが、真空管アンプを設計してみました。


先日購入した EL32(CV1052)
先日購入した EL32(CV1052)

EL32 (CV1052) のペア封印作業
EL32(CV1052)のペア封印作業

蟲師 オリジナル・サウンドトラック 蟲音を聴きながら、また~りと設計作業してました。
蟲師 オリジナル・サウンドトラック 蟲音を聴きながら、また~りと設計作業してました。


それで、実際の設計は、以前に検討した 12AX7-42シングル真空管アンプ をベースにしました。


トロイダル電源トランスで12AX7-42シングル真空管アンプを設計してみた
http://valvolerosso.asablo.jp/blog/2013/03/03/6736066


 Toroidal Transformer
Toroidal Transformer

12AX7-42(41) Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier) using Toroidal transformer testing circuit トロイダル電源トランスを使用した真空管アンプ回路図
12AX7-42(41) Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier) using Toroidal transformer testing circuit トロイダル電源トランスを使用した真空管アンプ回路図


回路定数がほとんど同じ(!)なので、ソケットとグリッドキャップをどうにかすれば、差し換えできるかも。。。(汗

デカップリング抵抗と電源抵抗がちょっと異なるだけですので、この程度の差異だったら真空管のバラツキの方が大きいかもしれません。


EL32の三結特性図 (EL32 Triode Connection)
EL32の三結特性図 (EL32 Triode Connection)
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/154/e/EL32.pdf


12AX7の特性図 (6AV6/12AX7/6N2P-EV)
12AX7の特性図 (6AV6/12AX7/6N2P-EV)
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/093/6/6AV6.pdf


12AX7-EL32(CV1052) Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier) using Toroidal Transformer testing circuit トロイダル電源トランスを使用した真空管アンプ回路図
12AX7-EL32(CV1052) Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier) using Toroidal Transformer testing circuit トロイダル電源トランスを使用した真空管アンプ回路図


なお、シャーシは、カラーアルマイト処理したシャーシを使用する予定です。実は、グリッド・キャップのコードを通す穴をあらかじめ開けてあるので、しっかりとEL32に対応(!)するようになってたりします。。。(汗

いやさあ、41とか42でアンプ作っても、結局のところ、EL32の方が良い!とかテツさん言い出しそうだから、もしもの時の保険に穴を開けておきました。   ( なんじゃそりゃ。。。(^_^; )


カラーアルマイト・シャーシには、グリッド・キャップのコードを通す穴が開いてます。
カラーアルマイト・シャーシには、グリッド・キャップのコードを通す穴が開いてます。


このように準備が万全!なので、すぐに製作に取りかかるかと言いますと、実は。。。(汗


正直に告白しますと、この週末、アマゾンから書籍が来た!

テツさん、本を読みたくてウズウズしています!!


梨木香歩 冬虫夏草 と 上橋菜穂子 物語ること、生きること
梨木香歩 冬虫夏草 と 上橋菜穂子 物語ること、生きること


梨木香歩 冬虫夏草
http://www.amazon.co.jp/dp/410429909X

上橋菜穂子 物語ること、生きること
http://www.amazon.co.jp/dp/4062185687


梨木香歩 冬虫夏草 は、家守綺譚の続編ですし、上橋菜穂子の本はテツさんの心のオアシス(!)なので読みたくてしょうがないです。

おまけに、柏葉幸子 霧のむこうのふしぎな町 (新装版) と 帰命寺横丁の夏 まで購入してしまいましたっ!!


柏葉幸子 帰命寺横丁の夏
柏葉幸子 帰命寺横丁の夏


柏葉幸子 帰命寺横丁の夏
http://www.amazon.co.jp/dp/4062171732

霧のむこうのふしぎな町 (新装版)
http://www.amazon.co.jp/dp/4061486683


私は児童文学とかも普通に読む人間ですので、柏葉幸子の著作は以前より読みたいと思っていました。

特に、霧のむこうのふしぎな町 は、かな~り有名!ですよねー。


ジブリ『耳をすませば』DVD と 霧のむこうのふしぎな町
ジブリ『耳をすませば』DVD と 霧のむこうのふしぎな町


アマゾン・レビューにも書いてありましたけど、映画 『耳をすませば』 の劇中で聖司が読んでる本がコレですよね。(^O^)


『耳をすませば』で、聖司が読んでる本が霧のむこうのふしぎな町です。
耳をすませば』で、聖司が読んでる本が霧のむこうのふしぎな町です。


そんな訳で、テツさんこれから読書タイムですので、真空管アンプの製作は、もうちょっと後になります。


すみません。。。(汗


なお、パソコンの組立の方ですけど、今回はいろいろ予算を注ぎ込んでるので、やっぱり電源もちゃんとしたヤツにしようと考え直して、追加で電源も注文しました。


オウルテック 80PLUS BRONZE シーソニック電源 520W
オウルテック 80PLUS BRONZE シーソニック電源 520W


電源も届いたばかりですのでパソコンの組立の方も、さっぱり進展していません。

ホント、なにやってんだか。。。(滝汗


( なんじゃそりゃ。。。(^_^; )


12AX7-EL32シングル真空管アンプ2012/08/12 18:24

最近、暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
こう暑いとハンダ付けする気がおきません。


昨年今頃のブログ記事を読み返してみると、去年の8月は、PARABOX Pちゃんの記事ばかりなので、どうやらやっぱり真空管アンプを製作していなかったようです。。。(汗


2011年8月の記事は、PARABOX Pちゃんの記事ばかり
http://valvolerosso.asablo.jp/blog/2011/08/


6N2PEV-HY65 Single Ended Amplifier PARABOX P-chan 40cm doll
6N2PEV-HY65 Single Ended Amplifier PARABOX P-chan 40cm doll



とは言っても当ブログは、いちおう真空管アンプについてのブログなので、
前回の記事に書いた、12AX7-6G6Gシングル真空管アンプについて書きたいと思います。

なお、6G6Gアンプは製作後にEL32アンプに組み替えてしまったので、12AX7-EL32シングル真空管アンプとして設計します。


6G6G、EL32は、ヒーター容量が小さく、省エネ(低発熱)+省スペース(コンパクト)真空管アンプを製作できますので、専用の電源トランスを特注しました。


A級シングルは、無信号時でもプレート電流は常時流れていますので、

アンプ全体の消費電力 = 大気中に放出される熱

みたいなものです。

電源トランス容量を小さくすれば、真空管アンプから発生する熱量は少なくなるハズですので、電源トランス総容量20VA(!)のトランスを制作しました。

ちなみに、20VAはどのくらいの容量かと申しますと、6L6プッシュプルのヒーター容量は、6.3V×0.9A×4=22.68VAですので、6L6を4本ヒーター点火する電力よりも小さな値です。


春日無線 特注20VA電源トランス H22-02201
春日無線 特注20VA電源トランス H22-02201

2年以上前に、春日無線に特注して制作して貰った電源トランスです。
0-210V 70mA  0-6.3V 0.8A の小型バンド型です。


特注した電源トランスは、出力電圧210V 許容電流70mA 70mA×0.64=44.8mAですので、
ブリッジ整流の場合の電源トランス許容電流は、約45mA(DC)
210V×1.32倍=277V  出力電圧277V と予想しています。


【出力段】の設計


RCA nickel plate 6AK6 & SYLVANIA 6G6-G
Sylvania 6G6-G

6G6Gの三結特性図 (6G6-G Triode Connection)
6G6Gの三結特性図 (6G6-G Triode Connection)
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/049/6/6G6G.pdf

6G6G動作基準点は、

プレート電圧223V、プレート電流15mA、バイアス-15V、負荷7KΩ、カソード抵抗1KΩ



GE Canada EL32 (VT52 Canadian General Electric FEB.1948)
GE Canada EL32 (VT52 Canadian General Electric FEB.1948)

EL32の三結特性図 (EL32 Triode Connection)
EL32の三結特性図 (EL32 Triode Connection)
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/154/e/EL32.pdf


EL32動作基準点は、

プレート電圧218V、プレート電流17.5mA、バイアス-20.5V、負荷7KΩ、カソード抵抗1.2KΩ

とします。

さて、出力段の動作点が決定したら、後は【B電圧】を求めます。

EL32プレート電圧218Vにバイアス電圧20.5Vを加えた、
対アース電圧のプレート電圧238.5Vに、
出力トランス直流抵抗(DCR)電圧降下分を、さらに加えたものが、
【B電圧】です。

春日製OUT41-357の出力トランス一次側/直流抵抗(DCR)は、
330Ωですので、電圧降下は、

(プレート電流)0.0175A×(DCR)330Ω = 約5.8V

238.5V+5.8V= 244.3V  【B電圧】=約244V



【初段】の設計

 
12AX7の特性図 (6AV6/12AX7/6N2P-EV)
12AX7の特性図 (6AV6/12AX7/6N2P-EV)
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/093/6/6AV6.pdf


実際に使用する球は、手持ちの関係から、12AX7の6.3V専用球の6N2P-EV-OSを使用します。


Russian Military 6N2P-EV-OS
Russian Military 6N2P-EV-OS



さて、初段12AX7(6N2P-EV)の動作条件は、

プレート電圧190V、プレート電流0.4mA、バイアス-2V、
負荷抵抗100KΩ、カソード抵抗5.1KΩ、デカップリング抵抗7.5KΩ 


でしたので、とりあえず、グラフが読みやすいように、初段を±1Vスイングさせると、基準のバイアス-2Vを中心にして87.2KΩロードライン上の、バイアス-1Vから-3Vまでスイングします。


その時の、電圧の変化量は、

ゼロバイアス側 → 190V-136V=54V
カットオフ側   → 222V-190V=32V

特性曲線の右下のバイアスの間隔が詰まっているので、
カットオフ側【32V側】は、どん詰まりになって、
このように歪む訳です。(←二次歪みの発生)

シングル二段増幅は、初段と出力段の位相が逆になるので、このどん詰まりの【32V側】は、出力段のゼロバイアス側をスイングする事になります。(←コレ重要)


出力段EL32のバイアスは、-20.5Vですので、
20.5Vを32Vで、割ると、20.5÷32V=0.64

まあなんと言いますか、アタマの中で仮に、NFBが掛かって初段のゲインが、0.64倍になった。とでも考えて下さい。
初段のゲインは変化しないのですけど、便宜上そう考えて下さい。。。(汗


いっぽう、初段のゼロバイアス側【54V側】は、
54V×0.64=34.6V

となり、

NFBがかかって、初段のゲインが、0.64倍されたと想像すると。。。

出力段のゼロバイアス側は、32V×0.64=20.5V
出力段のカットオフ側は、  54V×0.64=34.6V

となって、初段をワザと歪ませると、出力段のバイアスを、カットオフ側に-34.6V。
つまり、14.1V分を余計に、オーバー・スイングしてくれる訳です。


従って、初段を歪ませて、オーパースイングさせると、
カットオフ側のバイアスは20.5V+34.6V=55.1Vまで振り込むので、
およそバイアスを-55Vまでスイングさせたとすると、


335V-90V=245V
245V÷2√2=86.6V
86.6^2÷7000Ω=1.07W


と、なって、出力段の歪みと出力が改善されて、最大出力は、約1.1W となります。

これが、いわゆる
“ シングル二段増幅における二次歪みの打ち消しテクニック ”
です。

打ち消すと言うよりも、遊び電流を活用して設計動作点を超えて、オーバー・スイングさせる(振り込ませる)イメージが近い。と思うのですけど。。。



最初に仮定した初段入力電圧の±1Vは、ピーク値ですから、

1Vpeak÷√2=0.71Vrms(実効値)

0.64倍のNFBは-3.9dBですので、おおよそ-4dB

入力0.71Vrms、NFB-4dBで、
フルパワー1.1Wというアンプになるでしょうか?


実際は、もう少しNFB量を大きくして出力を1W以下に落とした方が良いかもしれません。。。(汗




これまでの検討の結果から、回路図を作成しました。


12AX7-EL32 Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier)
12AX7-EL32 Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier)


P-G帰還抵抗値は、とりあえずの便宜上で 1MΩ としました。

実際は、カソード帰還との兼ね合いで、NFBが-6dBくらいになるようにP-G帰還抵抗値を、カットアンドトライで決定していきます。



あと、出力管EL32をムラードST管にしてみました。


6N2PEV-EL32 (Mullard ST shape) Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier) Wave Beach Queens 1/10 Scale Pre-painted PVC Figure K-On! Azusa Nakano Swimsuit Suntan Version
6N2PEV-EL32 (Mullard ST shape) Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier) Wave Beach Queens 1/10 Scale Pre-painted PVC Figure K-On! Azusa Nakano Swimsuit Suntan Version


12AX7-EL32 Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier)
12AX7-EL32 Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier)


これまでの設計から、カソード抵抗の値を1KΩ→1.2KΩに変更しますと、6G6GアンプがEL32アンプになります。


6N2PEV-EL32シングルアンプ 手直し作業


6G6GとEL32は、ピンアサインが被りますし、カソード抵抗1.2KΩでも6G6Gは動作すると思うので、差し替えできるハズなのですけど、実際はあまり意味はありません。。。

なぜなら、ぶっちゃけ、EL32の方が格段に音が良い(!)ので、球を差し替える気にならないのです。。。(滝汗


。。。。。


いまさらこんな事を言うのはアレですけど、動かしがたい事実(!)ですからホント、こればっかりはしょうがありません。とほほ。。。
ヒーター容量が似たようなモノなのですけど、なんでこんなに違いが出るのか、とても不思議です。


欲を言えば、EL32ムラードSTシェイプが欲しいところですけど、GEカナダEL32ストレート管でも必要十分なクオリティのアンプを製作できるので、省エネ(低ヒーター容量)の球ではお気に入りの球です。(^O^)


私はアンプをコンパクトにする為に、いつもOUT41-357を使用しますけど、出力トランスを春日KA-5730に換装すれば、たぶん実用上十分なアンプになると思います。

ていうか、一度EL32でアンプを製作すると、大きくて重くて発熱がすごいアンプ(!)を作る気がしなくなります。
あくまで、私のごく個人的な感想ですけど。。。(大汗


( なんじゃそりゃ。。。(^_^; )




おまけ


ちなみに、EL32シングル真空管アンプを球体関節人形の腹部に入れてみたらどうなるか?試しにCADで描いてみました。


12AX7-EL32 (Mullard ST shape) Single Ended Ball-jointed doll tube Amplifier
12AX7-EL32 (Mullard ST shape) Single Ended Ball-jointed doll tube Amplifier


電源トランスと出力トランスは、ベース(台座)に収納する設計ですけど、球体関節人形の全長は、およそ80cmくらいになるかと。。。

60cmドールのDDなどよりも、アタマ2個分大きい(!)ので、かなり大きいと思います。

パソコン画面ですと実感が湧かないですし、実際にドールを所有していないとピンと来ないと思いますけど、全長80cmの人形って、ホントすごくデカいです!


まあでも、立体造形作家の方ってそれくらいの大きさの作品なら、むしろ小さいくらいで、原寸大の人形(!)とか、ごく普通に制作してしまうんですよね。。。(汗