12AX7-EL32シングル真空管アンプ ― 2012/08/12 18:24
最近、暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
こう暑いとハンダ付けする気がおきません。
昨年今頃のブログ記事を読み返してみると、去年の8月は、PARABOX Pちゃんの記事ばかりなので、どうやらやっぱり真空管アンプを製作していなかったようです。。。(汗
2011年8月の記事は、PARABOX Pちゃんの記事ばかり
http://valvolerosso.asablo.jp/blog/2011/08/
こう暑いとハンダ付けする気がおきません。
昨年今頃のブログ記事を読み返してみると、去年の8月は、PARABOX Pちゃんの記事ばかりなので、どうやらやっぱり真空管アンプを製作していなかったようです。。。(汗
2011年8月の記事は、PARABOX Pちゃんの記事ばかり
http://valvolerosso.asablo.jp/blog/2011/08/
6N2PEV-HY65 Single Ended Amplifier PARABOX P-chan 40cm doll
とは言っても当ブログは、いちおう真空管アンプについてのブログなので、
前回の記事に書いた、12AX7-6G6Gシングル真空管アンプについて書きたいと思います。
なお、6G6Gアンプは製作後にEL32アンプに組み替えてしまったので、12AX7-EL32シングル真空管アンプとして設計します。
6G6G、EL32は、ヒーター容量が小さく、省エネ(低発熱)+省スペース(コンパクト)真空管アンプを製作できますので、専用の電源トランスを特注しました。
A級シングルは、無信号時でもプレート電流は常時流れていますので、
アンプ全体の消費電力 = 大気中に放出される熱
みたいなものです。
電源トランス容量を小さくすれば、真空管アンプから発生する熱量は少なくなるハズですので、電源トランス総容量20VA(!)のトランスを制作しました。
ちなみに、20VAはどのくらいの容量かと申しますと、6L6プッシュプルのヒーター容量は、6.3V×0.9A×4=22.68VAですので、6L6を4本ヒーター点火する電力よりも小さな値です。
とは言っても当ブログは、いちおう真空管アンプについてのブログなので、
前回の記事に書いた、12AX7-6G6Gシングル真空管アンプについて書きたいと思います。
なお、6G6Gアンプは製作後にEL32アンプに組み替えてしまったので、12AX7-EL32シングル真空管アンプとして設計します。
6G6G、EL32は、ヒーター容量が小さく、省エネ(低発熱)+省スペース(コンパクト)真空管アンプを製作できますので、専用の電源トランスを特注しました。
A級シングルは、無信号時でもプレート電流は常時流れていますので、
アンプ全体の消費電力 = 大気中に放出される熱
みたいなものです。
電源トランス容量を小さくすれば、真空管アンプから発生する熱量は少なくなるハズですので、電源トランス総容量20VA(!)のトランスを制作しました。
ちなみに、20VAはどのくらいの容量かと申しますと、6L6プッシュプルのヒーター容量は、6.3V×0.9A×4=22.68VAですので、6L6を4本ヒーター点火する電力よりも小さな値です。
春日無線 特注20VA電源トランス H22-02201
2年以上前に、春日無線に特注して制作して貰った電源トランスです。
0-210V 70mA 0-6.3V 0.8A の小型バンド型です。
特注した電源トランスは、出力電圧210V 許容電流70mA 70mA×0.64=44.8mAですので、
ブリッジ整流の場合の電源トランス許容電流は、約45mA(DC)
210V×1.32倍=277V 出力電圧277V と予想しています。
【出力段】の設計
2年以上前に、春日無線に特注して制作して貰った電源トランスです。
0-210V 70mA 0-6.3V 0.8A の小型バンド型です。
特注した電源トランスは、出力電圧210V 許容電流70mA 70mA×0.64=44.8mAですので、
ブリッジ整流の場合の電源トランス許容電流は、約45mA(DC)
210V×1.32倍=277V 出力電圧277V と予想しています。
【出力段】の設計
Sylvania 6G6-G
6G6Gの三結特性図 (6G6-G Triode Connection)
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/049/6/6G6G.pdf
6G6G動作基準点は、
プレート電圧223V、プレート電流15mA、バイアス-15V、負荷7KΩ、カソード抵抗1KΩ
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/049/6/6G6G.pdf
6G6G動作基準点は、
プレート電圧223V、プレート電流15mA、バイアス-15V、負荷7KΩ、カソード抵抗1KΩ
GE Canada EL32 (VT52 Canadian General Electric FEB.1948)
EL32の三結特性図 (EL32 Triode Connection)
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/154/e/EL32.pdf
EL32動作基準点は、
プレート電圧218V、プレート電流17.5mA、バイアス-20.5V、負荷7KΩ、カソード抵抗1.2KΩ
とします。
さて、出力段の動作点が決定したら、後は【B電圧】を求めます。
EL32プレート電圧218Vにバイアス電圧20.5Vを加えた、
対アース電圧のプレート電圧238.5Vに、
出力トランス直流抵抗(DCR)電圧降下分を、さらに加えたものが、
【B電圧】です。
春日製OUT41-357の出力トランス一次側/直流抵抗(DCR)は、
330Ωですので、電圧降下は、
(プレート電流)0.0175A×(DCR)330Ω = 約5.8V
238.5V+5.8V= 244.3V 【B電圧】=約244V
【初段】の設計
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/154/e/EL32.pdf
EL32動作基準点は、
プレート電圧218V、プレート電流17.5mA、バイアス-20.5V、負荷7KΩ、カソード抵抗1.2KΩ
とします。
さて、出力段の動作点が決定したら、後は【B電圧】を求めます。
EL32プレート電圧218Vにバイアス電圧20.5Vを加えた、
対アース電圧のプレート電圧238.5Vに、
出力トランス直流抵抗(DCR)電圧降下分を、さらに加えたものが、
【B電圧】です。
春日製OUT41-357の出力トランス一次側/直流抵抗(DCR)は、
330Ωですので、電圧降下は、
(プレート電流)0.0175A×(DCR)330Ω = 約5.8V
238.5V+5.8V= 244.3V 【B電圧】=約244V
【初段】の設計
12AX7の特性図 (6AV6/12AX7/6N2P-EV)
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/093/6/6AV6.pdf
実際に使用する球は、手持ちの関係から、12AX7の6.3V専用球の6N2P-EV-OSを使用します。
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/093/6/6AV6.pdf
実際に使用する球は、手持ちの関係から、12AX7の6.3V専用球の6N2P-EV-OSを使用します。
Russian Military 6N2P-EV-OS
さて、初段12AX7(6N2P-EV)の動作条件は、
プレート電圧190V、プレート電流0.4mA、バイアス-2V、
負荷抵抗100KΩ、カソード抵抗5.1KΩ、デカップリング抵抗7.5KΩ
でしたので、とりあえず、グラフが読みやすいように、初段を±1Vスイングさせると、基準のバイアス-2Vを中心にして87.2KΩロードライン上の、バイアス-1Vから-3Vまでスイングします。
その時の、電圧の変化量は、
ゼロバイアス側 → 190V-136V=54V
カットオフ側 → 222V-190V=32V
特性曲線の右下のバイアスの間隔が詰まっているので、
カットオフ側【32V側】は、どん詰まりになって、
このように歪む訳です。(←二次歪みの発生)
シングル二段増幅は、初段と出力段の位相が逆になるので、このどん詰まりの【32V側】は、出力段のゼロバイアス側をスイングする事になります。(←コレ重要)
出力段EL32のバイアスは、-20.5Vですので、
20.5Vを32Vで、割ると、20.5÷32V=0.64
まあなんと言いますか、アタマの中で仮に、NFBが掛かって初段のゲインが、0.64倍になった。とでも考えて下さい。
初段のゲインは変化しないのですけど、便宜上そう考えて下さい。。。(汗
いっぽう、初段のゼロバイアス側【54V側】は、
54V×0.64=34.6V
となり、
NFBがかかって、初段のゲインが、0.64倍されたと想像すると。。。
出力段のゼロバイアス側は、32V×0.64=20.5V
出力段のカットオフ側は、 54V×0.64=34.6V
となって、初段をワザと歪ませると、出力段のバイアスを、カットオフ側に-34.6V。
つまり、14.1V分を余計に、オーバー・スイングしてくれる訳です。
従って、初段を歪ませて、オーパースイングさせると、
カットオフ側のバイアスは20.5V+34.6V=55.1Vまで振り込むので、
およそバイアスを-55Vまでスイングさせたとすると、
335V-90V=245V
245V÷2√2=86.6V
86.6^2÷7000Ω=1.07W
と、なって、出力段の歪みと出力が改善されて、最大出力は、約1.1W となります。
これが、いわゆる
“ シングル二段増幅における二次歪みの打ち消しテクニック ”
です。
打ち消すと言うよりも、遊び電流を活用して設計動作点を超えて、オーバー・スイングさせる(振り込ませる)イメージが近い。と思うのですけど。。。
最初に仮定した初段入力電圧の±1Vは、ピーク値ですから、
1Vpeak÷√2=0.71Vrms(実効値)
0.64倍のNFBは-3.9dBですので、おおよそ-4dB
入力0.71Vrms、NFB-4dBで、
フルパワー1.1Wというアンプになるでしょうか?
実際は、もう少しNFB量を大きくして出力を1W以下に落とした方が良いかもしれません。。。(汗
これまでの検討の結果から、回路図を作成しました。
さて、初段12AX7(6N2P-EV)の動作条件は、
プレート電圧190V、プレート電流0.4mA、バイアス-2V、
負荷抵抗100KΩ、カソード抵抗5.1KΩ、デカップリング抵抗7.5KΩ
でしたので、とりあえず、グラフが読みやすいように、初段を±1Vスイングさせると、基準のバイアス-2Vを中心にして87.2KΩロードライン上の、バイアス-1Vから-3Vまでスイングします。
その時の、電圧の変化量は、
ゼロバイアス側 → 190V-136V=54V
カットオフ側 → 222V-190V=32V
特性曲線の右下のバイアスの間隔が詰まっているので、
カットオフ側【32V側】は、どん詰まりになって、
このように歪む訳です。(←二次歪みの発生)
シングル二段増幅は、初段と出力段の位相が逆になるので、このどん詰まりの【32V側】は、出力段のゼロバイアス側をスイングする事になります。(←コレ重要)
出力段EL32のバイアスは、-20.5Vですので、
20.5Vを32Vで、割ると、20.5÷32V=0.64
まあなんと言いますか、アタマの中で仮に、NFBが掛かって初段のゲインが、0.64倍になった。とでも考えて下さい。
初段のゲインは変化しないのですけど、便宜上そう考えて下さい。。。(汗
いっぽう、初段のゼロバイアス側【54V側】は、
54V×0.64=34.6V
となり、
NFBがかかって、初段のゲインが、0.64倍されたと想像すると。。。
出力段のゼロバイアス側は、32V×0.64=20.5V
出力段のカットオフ側は、 54V×0.64=34.6V
となって、初段をワザと歪ませると、出力段のバイアスを、カットオフ側に-34.6V。
つまり、14.1V分を余計に、オーバー・スイングしてくれる訳です。
従って、初段を歪ませて、オーパースイングさせると、
カットオフ側のバイアスは20.5V+34.6V=55.1Vまで振り込むので、
およそバイアスを-55Vまでスイングさせたとすると、
335V-90V=245V
245V÷2√2=86.6V
86.6^2÷7000Ω=1.07W
と、なって、出力段の歪みと出力が改善されて、最大出力は、約1.1W となります。
これが、いわゆる
“ シングル二段増幅における二次歪みの打ち消しテクニック ”
です。
打ち消すと言うよりも、遊び電流を活用して設計動作点を超えて、オーバー・スイングさせる(振り込ませる)イメージが近い。と思うのですけど。。。
最初に仮定した初段入力電圧の±1Vは、ピーク値ですから、
1Vpeak÷√2=0.71Vrms(実効値)
0.64倍のNFBは-3.9dBですので、おおよそ-4dB
入力0.71Vrms、NFB-4dBで、
フルパワー1.1Wというアンプになるでしょうか?
実際は、もう少しNFB量を大きくして出力を1W以下に落とした方が良いかもしれません。。。(汗
これまでの検討の結果から、回路図を作成しました。
12AX7-EL32 Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier)
P-G帰還抵抗値は、とりあえずの便宜上で 1MΩ としました。
実際は、カソード帰還との兼ね合いで、NFBが-6dBくらいになるようにP-G帰還抵抗値を、カットアンドトライで決定していきます。
あと、出力管EL32をムラードST管にしてみました。
P-G帰還抵抗値は、とりあえずの便宜上で 1MΩ としました。
実際は、カソード帰還との兼ね合いで、NFBが-6dBくらいになるようにP-G帰還抵抗値を、カットアンドトライで決定していきます。
あと、出力管EL32をムラードST管にしてみました。
6N2PEV-EL32 (Mullard ST shape) Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier) Wave Beach Queens 1/10 Scale Pre-painted PVC Figure K-On! Azusa Nakano Swimsuit Suntan Version
12AX7-EL32 Single Ended Amplifier (Tube Headphone Amplifier)
これまでの設計から、カソード抵抗の値を1KΩ→1.2KΩに変更しますと、6G6GアンプがEL32アンプになります。
これまでの設計から、カソード抵抗の値を1KΩ→1.2KΩに変更しますと、6G6GアンプがEL32アンプになります。
6G6GとEL32は、ピンアサインが被りますし、カソード抵抗1.2KΩでも6G6Gは動作すると思うので、差し替えできるハズなのですけど、実際はあまり意味はありません。。。
なぜなら、ぶっちゃけ、EL32の方が格段に音が良い(!)ので、球を差し替える気にならないのです。。。(滝汗
。。。。。
いまさらこんな事を言うのはアレですけど、動かしがたい事実(!)ですからホント、こればっかりはしょうがありません。とほほ。。。
ヒーター容量が似たようなモノなのですけど、なんでこんなに違いが出るのか、とても不思議です。
欲を言えば、EL32ムラードSTシェイプが欲しいところですけど、GEカナダEL32ストレート管でも必要十分なクオリティのアンプを製作できるので、省エネ(低ヒーター容量)の球ではお気に入りの球です。(^O^)
私はアンプをコンパクトにする為に、いつもOUT41-357を使用しますけど、出力トランスを春日KA-5730に換装すれば、たぶん実用上十分なアンプになると思います。
ていうか、一度EL32でアンプを製作すると、大きくて重くて発熱がすごいアンプ(!)を作る気がしなくなります。
あくまで、私のごく個人的な感想ですけど。。。(大汗
( なんじゃそりゃ。。。(^_^; )
おまけ
ちなみに、EL32シングル真空管アンプを球体関節人形の腹部に入れてみたらどうなるか?試しにCADで描いてみました。
12AX7-EL32 (Mullard ST shape) Single Ended Ball-jointed doll tube Amplifier
電源トランスと出力トランスは、ベース(台座)に収納する設計ですけど、球体関節人形の全長は、およそ80cmくらいになるかと。。。
60cmドールのDDなどよりも、アタマ2個分大きい(!)ので、かなり大きいと思います。
パソコン画面ですと実感が湧かないですし、実際にドールを所有していないとピンと来ないと思いますけど、全長80cmの人形って、ホントすごくデカいです!
まあでも、立体造形作家の方ってそれくらいの大きさの作品なら、むしろ小さいくらいで、原寸大の人形(!)とか、ごく普通に制作してしまうんですよね。。。(汗
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