6N3PE-2A3シングルアンプの設計手順の紹介。2A3出力特性図(Ep-Ip図)6N3PEと12AX7のEp-Ip図があります。2025/02/16 18:06

本日のブログは、2A3シングルアンプの設計についてです。


前回のブログで、10Wタイプ出力トランスをオークションで落札してしまったので、以前の設計とは若干異なってしまった。と書きました。


出力トランス一次側直流抵抗DCRが、178Ω→322Ωとなった為、出力トランスでの電圧降下が大きいので、プレート電圧を下げる必要があります。


従って、動作点は、180V 42mA バイアス-30V プレート損失7.6W から、


170V 40mA バイアス-28V プレート損失6.8W となります。



【出力段】の設計


動作基準点を、プレート電圧170V、プレート電流40mA、バイアス-28V、負荷3.5KΩ、カソード抵抗700Ω

とします。


2A3 出力段 ロードライン検討
2A3 出力段 ロードライン検討 


さて、出力段の動作点が決定したら、後は【B電圧】を求めます。

プレート電圧170Vにバイアス電圧28Vを加えた、
対アース電圧のプレート電圧198Vに、
出力トランス直流抵抗(DCR)電圧降下分を、さらに加えたものが、
【B電圧】です。

オークションで落札した出力トランス一次側/直流抵抗(DCR)は、322Ωですので、電圧降下は、

(プレート電流)0.040A×(DCR)322Ω = 約12.9V

198V+12.9V= およそ211V

これが、いわゆる【B電圧】で、これを求めないと設計できないという、
回路のキモです。



【初段】の設計

 
B電圧が求まりましたので、次は初段の設計です。


初段は、12AX7(6N2P-EV)を予定していましたが、後述するように6N3P-Eにへ変更します。


まずは、12AX7から。。。


2A3シングル用 12AX7 初段ロードライン
2A3シングル用 12AX7 初段ロードライン


【B電圧】211Vから数ボルト引いた200V近辺から、負荷抵抗150Kのロードラインを引いてみます。
 

プレート電圧142.5V、プレート電流0.4mA、バイアス-1.5V、
カソード抵抗3.6KΩ、負荷抵抗150KΩ、デカップリング抵抗22KΩ


ところで、入力容量が大きい2A3を出力インピーダンスの高い12AX7でドライブすると、ハイ落ち(ミラー効果)します。


計算すると、高域側ポールは、40.5KHz(-3dB)となるようです。


私のアンプ設計マニュアル 低域の設計・高域の設計


初段を、A2134アンプでも採用した6N3PEに変更すると、高域側ポールは、244KHz(-3dB)となり、高域側が6倍以上拡大します。



2A3シングル用 6N3PE 初段ロードライン 
2A3シングル用 6N3PE 初段ロードライン 


プレート電圧126V、プレート電流2.5mA、バイアス-2.5V、
カソード抵抗1KΩ、負荷抵抗29KΩ、デカップリング抵抗3.9KΩ


ここで、負荷抵抗29KΩとなっていますが、これは誤植ではなく29KΩで間違いありません。


ていうか、この部分にはアーレンブラッドレー27KΩ2Wを採用する予定なのですが、このアーレンブラッドレー・カーボンコンポジション抵抗が経年変化で抵抗値が増加して29KΩ2Wとなっている為の実測値です。


オールド・ストック・ビンテージ抵抗あるあるです。。。(汗


なお、入力電圧を、1.75Vpeak(=1.24Vrms)に想定していますので、かなり強引な設計です。


CDプレーヤーの2Vrms出力想定の電圧なので、携帯プレーヤー等をソースに使用する場合は、ライン昇圧トランスが必須になるでしょう。



【電源平滑部】の設計


これまでの設計から、

出力段 40mA×2 = 80mA
初段 2.5mA×2 = 5mA
270KΩのブリーダーとすれば、0.8mA

とすると、回路に流れる総電流は、合計85.8mAです。


電源トランス180V×1.3倍 =234V


電源トランス出力電圧234Vから、【B電圧】211Vを引いて、
回路の総電流85.8mAで割れば電源平滑部の抵抗値が求まります。

(234V-2113V)/0.0858A = 273Ω

273Ω-97Ω =176Ω

 
よって、電源部の抵抗は、チョーク2H100mA(97Ω)と、180Ω~200Ω10W を一個使用します。




【回路のゲイン配分と最大出力】を最後に確認します。


これを実施しておかないとNFBを掛けたら出力段バイアスをフルスイングできなくなった!という事が起こりがちです。
私自身、何度も経験しました。。。(汗


さて、初段の動作条件は、


2A3シングル用 6N3PE 初段ロードライン 
2A3シングル用 6N3PE 初段ロードライン


プレート電圧126V、プレート電流2.5mA、バイアス-2.5V、
カソード抵抗1KΩ、負荷抵抗29KΩ、デカップリング抵抗3.9KΩ


初段を±1.75Vスイングさせると、基準のバイアス-2.5Vを中心にして、
ロードライン上の、バイアス-0.75Vから-4.25Vまでスイングします。


その時の、電圧の変化量は、

ゼロバイアス側 → 126V-82V=44V
カットオフ側   → 157V-126V=31V

特性曲線の右下のバイアスの間隔が詰まっているので、カットオフ側【31V側】は、どん詰まりになって、このように歪む訳です。(←二次歪みの発生)

シングル二段増幅は、初段と出力段の位相が逆になるので、
このどん詰まりの【31V側】は、出力段のゼロバイアス側をスイングする事になります。(←コレ重要)


出力段のバイアスは、-28Vですので、
28Vを31Vで、割ると、28÷31V=0.903

まあなんと言いますか、アタマの中で仮に、NFBが掛かって初段のゲインが、0.903倍になった。とでも考えて下さい。
初段のゲインは変化しないのですけど、便宜上そう考えて下さい。。。(汗


それで、初段のゼロバイアス側【44V側】は、
44V×0.903=39.7V

となり、

NFBがかかって、初段のゲインが、0.903倍されたと想像すると。。。

出力段のゼロバイアス側は、31V×0903=28V
出力段のカットオフ側は、 44V×0.903=39.7V

となって、初段をワザと歪ませると出力段のバイアスをカットオフ側に-39.7V。
つまり、11.7V分を余計に、オーバー・スイングしてくれる訳です。




2A3 出力段 ロードライン検討
2A3 出力段 ロードライン検討 



カットオフ側のバイアスは、28V+39.7V=67.7Vまで振り込むので、
およそバイアスを -67.7V までスイングさせたとすると。。。


ゼロバイアス側のプレート電圧変化量ΔEpは、

170V - 72V = 98V です。

それに対して、カットオフ側のプレート電圧変化量ΔEpは、

通常時 → 255V - 170V = 85V
オーバースイング時 → 280V - 170V = 110V




オーパースイング時の最大出力は、

280V-72V=208V
208V÷2√2=73.5V
73.5^2÷3500Ω=1.55W

と、なって、出力段の歪みと出力が改善されて、
最大出力は、1.55W となります。


なお、ゲインの0.903倍は、-0.9dBとなるので、


入力電圧1.75Vpeak(=1.24Vrms)時、NFB=-0.9dBでフルパワー1.55Wのアンプになります。



以上が2A3アンプの設計になります。


これまでの事をまとめて回路図にすると。。。


6N3PE-2A3シングルアンプ 回路図
6N3PE-2A3シングルアンプ 回路図


本日のブログは以上となります。


次回から、製作編になります。



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