6N3PE-6P15PEVシングル真空管アンプ(3)2011/12/07 17:22

引き続き、6N3PE-6P15PEVシングルアンプの設計です。

今回は、回路のゲイン配分最大出力を確認します。

これを実施しておかないとNFBを掛けたら出力段バイアスをフルスイングできなくなった!という事が起こりがちです。
私自身、何度も経験しました。。。(汗



さて、初段の動作条件は、

プレート電圧125V、プレート電流2.5mA、バイアス-2.5V、
負荷抵抗27KΩ、カソード抵抗1KΩ、デカップリング抵抗15
KΩ 

でしたので、とりあえず、グラフが読みやすいように、初段を±1Vスイングさせると、基準のバイアス-2.5Vを中心にして24.8KΩロードライン上の、バイアス-1.5Vから-3.5Vまでスイングします。


6N3PE-6P15PERアンプ 初段ロードライン(2)


その時の、電圧の変化量は、

ゼロバイアス側 → 125V-102V=23V
カットオフ側   → 144V-125V=19V

特性曲線の右下のバイアスの間隔が詰まっているので、
カットオフ側【19V側】は、どん詰まりになって、
このように歪む訳です。(←二次歪みの発生)

シングル二段増幅は、初段と出力段の位相が逆になるので、このどん詰まりの【19V側】は、出力段のゼロバイアス側をスイングする事になります。(←コレ重要)


出力段のバイアスは、-7.3Vですので、
7.3Vを19Vで、割ると、7.3÷19V=0.384

まあなんと言いますか、アタマの中で仮に、NFBが掛かって初段のゲインが、0.384倍になった。とでも考えて下さい。
初段のゲインは変化しないのですけど、便宜上そう考えて下さい。。。(汗


いっぽう、初段のゼロバイアス側【23V側】は、
23V×0.384=8.83V

となり、

NFBがかかって、初段のゲインが、0.384倍されたと想像すると。。。

出力段のゼロバイアス側は、19V×0.384=7.3V
出力段のカットオフ側は、  23V×0.384=8.83V

となって、初段をワザと歪ませると、出力段のバイアスを、カットオフ側に-8.83V。
つまり、1.53V分を余計に、オーバー・スイングしてくれる訳です。


6N3PE-6P15PERアンプ 出力ロードライン


通常の場合ですと、出力段の最大出力は、

306V-97V=209V
209V÷2√2=73.9V
73.9^2÷7000Ω=0.78W
計算上の出力は、0.78W ですけど、

初段を歪ませて、オーパースイングさせると、
カットオフ側のバイアスは7.3V+8.83V=16.13Vまで振り込むので、
およそバイアスを-16Vまでスイングさせたとすると、

321V-97V=224V
224V÷2√2=79.2V
79.2^2÷7000Ω=0.90W

と、なって、出力段の歪みと出力が改善されて、最大出力は、0.9W となります。

これが、いわゆる
“ シングル二段増幅における二次歪みの打ち消しテクニック ”
です。

打ち消すと言うよりも、遊び電流を活用して設計動作点を超えて、オーバー・スイングさせる(振り込ませる)イメージが近いと思うのですけど。。。


最初に仮定した初段入力電圧の±1Vは、ピーク値ですから、

1Vpeak÷√2=0.71Vrms(実効値)

0.384倍のNFBは、おおよそ-9.7dBですので、

入力0.71Vrms、NFB-9.7dBで、
フルパワー0.9Wというアンプになるでしょうか?


実際には、NFBを-9.7dBも掛けません。
あまり掛けすぎると、高域補正や、厳密な時定数の検討(スタガリング)が必要になりますので、実際には-6dB前後にするつもりです。。。(汗



これまでの検討の結果から、回路図を作成しました。


6N3PE-6P15PERアンプ 回路図


P-G帰還抵抗値は、とりあえずの便宜上で 680KΩ としました。

実際は、カソード帰還との兼ね合いで、NFBが-6dBくらいになるように、P-G帰還抵抗値を、カットアンドトライで決定していきます。



あと、ヘッドフォン出力部に減衰抵抗180Ωを入れています。

ダミーロード8.2Ωの両端に掛かる電圧を18062Ωで分圧しています。(正確に言えば、ヘッドフォンインピーダンスと62Ωの合成抵抗値で分圧しています。)
もっと厳密に計算すれば、出力トランス二次側は全ての抵抗の合成抵抗値になりますので、実際は、8Ωよりも小さな値になります。。。(汗


通常、昼間はスピーカーで音楽を聴き、夜間は近所迷惑になるのでヘッドフォンを使用するという使い方をする(?)と思うのですけど、その際、スイッチ付き標準ヘッドフォンジャックを利用してヘッドフォンのプラグを差し込んだ時にスピーカーが切れるようにして、なおかつ、スピーカーで適量で聴いていた音量とヘッドフォンで適量に聞こえる音量のバランスを、あらかじめ減衰抵抗180Ωを入れて調整しておく訳です。

ヘッドフォン・プラグを差し込んだ時に、ボリュームいじって音量調節するのが面倒くさいので。。。(大汗   ( ずぼらなヤツだな、おい。。。(^_^; )


なお、この180Ω抵抗の値は、
①アンプ出力
②スピーカー能率
③ヘッドフォン感度
④各人が適量と感じる音量
によって変わります。

また、分圧抵抗62Ωも、私自身が使用しているヘッドフォンのインピーダンスが、32~64Ωなので、これくらいの値にしています。

ですから、180Ωと62Ωの抵抗値は、各人おのおの使用している機器が異なるので、
実際に使ってる機器で試聴しながら、カットアンドトライで決定するしかないと思います。。。(汗


ちなみに。。。

私個人は、減衰抵抗部分にデールRN60抵抗を採用してるので、
アンプ出力  0.5W → 121Ω
アンプ出力  0.7W → 158Ω
アンプ出力  0.9W → 182Ω
みたいな感じになっちゃってますけど、絶対的な数値ではありません。
その点、ご理解下さい。。。

まあようするに、アンプ出力に応じて分圧比を変えている訳ですけど、
それで良いのか、現在のところ試行錯誤中です。。。(汗



次回は、実際のアンプ製作工程を、簡単にご紹介する予定です。

(次回につづく)





(おまけ)

ベテランの方ならよく分かっている処なのですが、もともと初段を歪まして、出力段の二次歪みを改善しよう!という手法は、実際はそんなにうまいこと全周波数帯域で相殺できるモノではありません。。。(汗

初段と出力段の位相が逆という仮定なのですけど、現実は段間の時定数回路(カップリング)があるので位相がズレているはずです。
ですから、初段を歪まして出力段の二次歪みを改善しても、実際の実情はNFB(カソード帰還+P-G帰還)によって諸特性が改善されているのだと、私個人は考えてたりします。


あと、最大出力についても、プレート電圧のピークからピークを取った電圧変化量ΔEpで計算する式ですので、実際は真空管がカットオフするまで、(つまり波形がクリップするまで)ダラダラと出力は増え続けます。


とは言っても、初心者の方に細かい話をしても混乱するだけなので、そこら辺のところはあまり突っ込まずに、さらりと流してくださるようお願い申し上げます。。。(大汗


( なんか苦しい説明だな、おい。。。(^_^; )