6BQ7-6CH6シングル真空管アンプ (3) ― 2011/10/07 19:49
引き続き、6BQ7-6CH6シングル真空管アンプの設計です。
今回は、回路のゲイン配分と最大出力を確認します。
これを実施しておかないとNFBを掛けたら出力段バイアスをフルスイングできなくなった!という事が起こりがちです。
初段の動作条件は、
プレート電圧96V、プレート電流2mA、バイアス-2V、
カソード抵抗1KΩ、負荷抵抗27KΩ、デカップリング抵抗39KΩ
でした。
また、6CH6の自己バイアス時グリッド抵抗最大値は220KΩですので、出力段グリッド・リーク抵抗を220KΩとした場合の初段負荷27KΩとの合成交流負荷は24KΩとなります。
さて、とりあえずグラフが読みやすいように初段を±1Vスイングさせると、基準バイアス-2Vを中心にして、交流負荷24KΩのロードライン上の、バイアス-1から-3Vまでスイングします。
その時の、電圧の変化量は、
ゼロバイアス側 → 96V-70V=26V
カットオフ側 → 117V-96V=21V
特性曲線の右下のバイアスの間隔が詰まっているので、カットオフ側【21V側】は、どん詰まりになって、このように歪む訳です。(←二次歪みの発生)
シングル二段増幅は、初段と出力段の位相が逆になるので、
このどん詰まりの【21V側】は、出力段のゼロバイアス側をスイングする事になります。(←コレ重要)
出力段のバイアスは、-6Vですので、
6Vを21Vで、割ると、6÷21V=0.286
まあなんと言いますか、アタマの中で仮に、NFBが掛かって初段のゲインが、0.286倍になった。とでも考えて下さい。
初段のゲインは変化しないのですけど、便宜上そう考えて下さい。。。(汗
それで、初段のゼロバイアス側【26V側】は、
26V×0.286=7.44V
となり、
NFBがかかって、初段のゲインが、0.286倍されたと想像すると。。。
出力段のゼロバイアス側は、21V×0.286 = 6V
出力段のカットオフ側は、 26V×0.286 = 7.44V
となって、初段をワザと歪ませると、出力段のバイアスを、カットオフ側に-7.44V。
つまり、1.44V分を余計に、オーバー・スイングしてくれる訳です。
カットオフ側のバイアスは、6V+7.44V=13.44Vまで振り込むので、
およそバイアスを-13.4Vまでスイングさせたとすると。。。
カットオフ側のプレート電圧変化量ΔEpは、
通常時 → 292V-220V = 72V
オーバースイング時 → 300V-220V = 80V
それに対して、ゼロバイアス側のプレート電圧変化量ΔEpは、
220V-108V = 112V です。
また、通常の最大出力は、
292V-108V=184V
184V÷2√2=65.1V
計算上の出力は、0.6W ですけど、
オーパースイング時の最大出力は、
300V-108V=192V
192V÷2√2=67.9V
67.9^2÷7000Ω=0.64W
と、なって、出力段の歪みと出力が、ほんのちょっと改善されて、
最大出力は、0.64W となります。
これが、いわゆる
“ シングル二段増幅における二次歪みの打ち消しテクニック ”
です。
打ち消すと言うよりも、遊び電流を活用して設計動作点を超えて、オーバー・スイングさせる(振り込ませる)イメージが近い。と思うのですけど。。。
最初に仮定した初段入力電圧の、±1Vは、ピーク値ですから、
1V÷√2=0.71Vrms(実効値)
0.286倍のNFBは、おおよそ-10.9dBですので、
入力0.71Vrms、NFB-10.9dBで、
フルパワー0.64Wというアンプになるでしょうか?
実際には、NFBを-10dBも掛けません。
あまり掛けすぎると、高域補正や、厳密な時定数の検討(スタガリング)が必要になりますので、実際には-6dB前後にする予定です。
あくまで、NFBを掛けても出力段バイアスがフルスイングできるという事を、あらかじめ机上検討で確認しておく訳です。
アンプ設計のゲイン配分と最大出力の検討は、こんな感じです。。。(汗
次回は、これまで設計した内容で回路図を書きます。
(次回につづく)
今回は、回路のゲイン配分と最大出力を確認します。
これを実施しておかないとNFBを掛けたら出力段バイアスをフルスイングできなくなった!という事が起こりがちです。
私自身、何度も経験しました。。。(汗
初段の動作条件は、
プレート電圧96V、プレート電流2mA、バイアス-2V、
カソード抵抗1KΩ、負荷抵抗27KΩ、デカップリング抵抗39KΩ
でした。
また、6CH6の自己バイアス時グリッド抵抗最大値は220KΩですので、出力段グリッド・リーク抵抗を220KΩとした場合の初段負荷27KΩとの合成交流負荷は24KΩとなります。
さて、とりあえずグラフが読みやすいように初段を±1Vスイングさせると、基準バイアス-2Vを中心にして、交流負荷24KΩのロードライン上の、バイアス-1から-3Vまでスイングします。
その時の、電圧の変化量は、
ゼロバイアス側 → 96V-70V=26V
カットオフ側 → 117V-96V=21V
特性曲線の右下のバイアスの間隔が詰まっているので、カットオフ側【21V側】は、どん詰まりになって、このように歪む訳です。(←二次歪みの発生)
シングル二段増幅は、初段と出力段の位相が逆になるので、
このどん詰まりの【21V側】は、出力段のゼロバイアス側をスイングする事になります。(←コレ重要)
出力段のバイアスは、-6Vですので、
6Vを21Vで、割ると、6÷21V=0.286
まあなんと言いますか、アタマの中で仮に、NFBが掛かって初段のゲインが、0.286倍になった。とでも考えて下さい。
初段のゲインは変化しないのですけど、便宜上そう考えて下さい。。。(汗
それで、初段のゼロバイアス側【26V側】は、
26V×0.286=7.44V
となり、
NFBがかかって、初段のゲインが、0.286倍されたと想像すると。。。
出力段のゼロバイアス側は、21V×0.286 = 6V
出力段のカットオフ側は、 26V×0.286 = 7.44V
となって、初段をワザと歪ませると、出力段のバイアスを、カットオフ側に-7.44V。
つまり、1.44V分を余計に、オーバー・スイングしてくれる訳です。
カットオフ側のバイアスは、6V+7.44V=13.44Vまで振り込むので、
およそバイアスを-13.4Vまでスイングさせたとすると。。。
カットオフ側のプレート電圧変化量ΔEpは、
通常時 → 292V-220V = 72V
オーバースイング時 → 300V-220V = 80V
それに対して、ゼロバイアス側のプレート電圧変化量ΔEpは、
220V-108V = 112V です。
また、通常の最大出力は、
292V-108V=184V
184V÷2√2=65.1V
65.1^2÷7000Ω=0.6W
計算上の出力は、0.6W ですけど、
オーパースイング時の最大出力は、
300V-108V=192V
192V÷2√2=67.9V
67.9^2÷7000Ω=0.64W
と、なって、出力段の歪みと出力が、ほんのちょっと改善されて、
最大出力は、0.64W となります。
これが、いわゆる
“ シングル二段増幅における二次歪みの打ち消しテクニック ”
です。
打ち消すと言うよりも、遊び電流を活用して設計動作点を超えて、オーバー・スイングさせる(振り込ませる)イメージが近い。と思うのですけど。。。
最初に仮定した初段入力電圧の、±1Vは、ピーク値ですから、
1V÷√2=0.71Vrms(実効値)
0.286倍のNFBは、おおよそ-10.9dBですので、
入力0.71Vrms、NFB-10.9dBで、
フルパワー0.64Wというアンプになるでしょうか?
実際には、NFBを-10dBも掛けません。
あまり掛けすぎると、高域補正や、厳密な時定数の検討(スタガリング)が必要になりますので、実際には-6dB前後にする予定です。
あくまで、NFBを掛けても出力段バイアスがフルスイングできるという事を、あらかじめ机上検討で確認しておく訳です。
アンプ設計のゲイン配分と最大出力の検討は、こんな感じです。。。(汗
次回は、これまで設計した内容で回路図を書きます。
(次回につづく)
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