6RHH2-PCL86~1万円真空管アンプ(3)2011/04/20 00:01

今回は、初段6R-HH2のロードラインの設計です。


【初段】の設計

 初段設計の際は、以下の制約があります。

 a.デカップリング時定数は、段間の時定数よりも、充分大きいのが
   望ましい。
ただし、三段増幅と違って、シングル二段増幅は、
   初段と出力段の位相が逆で、電源発振しないのでデカップリング
   にあまり神経質になることはないと思います。
       NFB量が-6dB以下でしたら、デカップリング抵抗は、
   3K~十数KΩくらいで常識的な数値なら問題ないのでは?。。。(汗

 b.負荷抵抗は、真空管の内部抵抗よりも大きくなければならない。
   バイアスが深くなると内部抵抗は増加するので、
   通常、負荷抵抗は、動作点内部抵抗の2倍以上取るようですけど、
   rp=80KΩの12AX7の負荷が100KΩなどはよくある事なので、
   特に2倍以上と決まっている訳ではないようです。。。(汗

 c.バイアス-1V以下は、初速度電流領域なので使用しない。



負荷抵抗は6414-PCL86シングルアンプの時と同様に27KΩを想定しています。
動作点での6R-HH2の内部抵抗は10KΩ位ですので、負荷は2倍以上ある事になります。


実を言いますと、アンプを製作する度に負荷抵抗を都度買うのは面倒なので、

カスコード管/コンピューター球で、内部抵抗10KΩ位  → 負荷27KΩ
12AX7/5755/6SL7GT等 内部抵抗の大きい球  →負荷100KΩ

という具合に、とりあえず自分で決めています。
しかも、初段の負荷にはカーボン・フィルム抵抗を使用しているので、
なるべく安価な1W抵抗を購入しています。
27KΩ1W、100KΩ1W あたりを10本単位でまとめ買いしています。

ですから、私の設計では初段の負荷抵抗は上記の値が多いです。。。(汗


そんな訳ですので、27KΩ1Wで、ワッテージのディレーティングを6倍確保すると考えると、流せる電流は2~2.5mA位です。

おまけに、カソード抵抗を1KΩにすると、テスターで測ったバイアス電圧値が、そのままプレート電流値になるので、とても判りやすいので、
プレート電流 2~2.5mA、バイアス電圧 -2~2.5V
 という設計が多いです。

今回の、初段6R-HH2のロードラインも、実はそのパターンです。

ちなみに、以前記事に書いた、6922-5687シングルもそうです。。。(汗
http://valvolerosso.asablo.jp/blog/2011/03/27/5761445


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前記事の通り、6R-HH2特性の代用として、4BC8プレート特性図
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/127/4/4BC8.pdf
を使用して、

プレート電流 2mA
バイアス電圧 -2V


をプロットすると、プレート電圧は、だいたい83Vくらいでした。
その動作点から、27KΩの負荷線(ロードライン)を引いてみます



ロードラインの引き方が判らないという方もいらっしゃるので詳しく書きます。


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動作点のプレート電流値2mA(D点)に、負荷27KΩを掛けます。

2mA×27KΩ = 54V

この54Vは、負荷27KΩ抵抗の電圧降下分です。

プレート電圧83V(B点)に、負荷抵抗の電圧降下分54Vを足します。

83V+54V = 137V

この137Vが、ロードラインの起点(C点)です。
つまり、プレート電流ゼロの、グラフの横軸の値になります。


また、このロードライン起点の137Vを、27KΩで割ると、

137V÷27KΩ =  5.1mA

この、5.1mAは、プレート電圧ゼロ、グラフの縦軸の値(E点)です。

つまり、ロードラインは、(電圧、電流)とすると、

(0V、5.1mA)/(83V、2mA)/(137V、0mA)

の3点を通る事になります。


ロードラインの起点137Vに、バイアス2Vを足した、139Vは、
初段の供給電圧(Ebb)、つまりデカップリング後の電圧値となります。

デカップリング後(つまり、負荷抵抗の入り口側)の電圧値ですので、

B電圧164.1V-139V = 25.1V (←デカップリング電圧降下)

この、25.1Vを、プレート電流2mAで割れば、
デカップリング抵抗の値になります。

25.1V÷2mA = 12.55KΩ

デカップリング抵抗は、12KΩとしました。


これまでの、結果をまとめますと、

プレート電圧83V、プレート電流2mA、バイアス-2V、
カソード抵抗1KΩ、負荷抵抗27KΩ、デカップリング抵抗12KΩ

となります。 

デカップリング抵抗の値も充分な様ですので、この動作点に決定しました。




【電源平滑部】の設計


まず、電源トランスの出力電圧を予想します。

出力電圧については、書籍『情熱の真空管』 P.111に書いてあります。
今回の回路ですと1.23倍と仮定して、

160V×1.23 = 196.8V

出力電圧は196.8Vとしました。

また、これまでの設計から、

出力段 12.5A×2 = 25mA
初段 2mA×2 = 4mA
100KΩのブリーダーとすれば、1.64mA

ですから、回路に流れる総電流は、合計30.6mAです。


出力電圧196.8Vから、【B電圧】164.1を引いて、
回路の総電流30.6mAで割れば、電源平滑部の抵抗値が求まります。

(196.8V-164.1V)/0.0306A = 1068.6Ω

1068.6Ω÷4 = 267Ω
 
よって、電源部の抵抗は、270Ωを4個、使用します。



次回は、ゲイン配分の確認と、最大出力の計算をご紹介する予定です。

(次回につづく)