6414-PCL86ロードラインの引き方(3)2011/04/11 10:17

引き続き、6414-PCL86シングルの設計です。


【出力段】の設計


前回は、出力段の動作を決定しました。

出力段の動作点が決定したら、後は【B電圧】を求めます。

プレート電圧210Vにバイアス電圧7Vを加えた、
対アース電圧のプレート電圧217Vに、
出力トランス直流抵抗(DCR)電圧降下分を、さらに加えたものが、
【B電圧】です。

春日製OUT41-357の出力トランス一次側/直流抵抗(DCR)は、
330Ωですので、電圧降下は、

(プレート電流)0.017A×(DCR)330Ω = 5.6V

217V+5.6V= 222.6V

およそ、223Vです。

これが、いわゆる【B電圧】で、これを求めないと設計できないという、
回路のキモです。


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【初段】の設計

 初段設計の際は、以下の制約があります。

 a.デカップリング時定数は、段間の時定数よりも、充分大きいのが
   望ましい。
ただし、三段増幅と違って、シングル二段増幅は、
   初段と出力段の位相が逆で、電源発振しないのでデカップリング
   にあまり神経質になることはないと思います。
       NFB量が-6dB以下でしたら、デカップリング抵抗は、
   3K~十数KΩくらいで常識的な数値なら問題ないのでは?。。。(汗

 b.負荷抵抗は、真空管の内部抵抗よりも大きくなければならない。
   バイアスが深くなると内部抵抗は増加するので、
   通常、負荷抵抗は、動作点内部抵抗の2倍以上とるようですけど、
   rp=80KΩの12AX7の負荷が100KΩなどはよくある事なので、
   特に2倍以上と決まっている訳ではないようです。。。(汗

 c.バイアス-1V以下は、初速度電流領域なので使用しない。


負荷抵抗は、安い1Wカーボン抵抗を使用したいので、ワッテージのディレーティングを考慮すれば、流せる電流は2mA位でしょうか?
6414特性図の2mAあたりの内部抵抗は18kΩくらいですし、ゲインはいらなそうなので、負荷は30kΩくらい?
段間の時定数は、0.47×0.068=0.032なので、10倍取ると0.3
0.3を47μF割れば、6.4kΩなので、デカップリング抵抗は、それくらいにしたい所です。
6.4kΩの3.5mAの電圧降下は、22.4V。
それでは、とりあえずデカップリングで、20V電圧降下させたとすると。。。
ロードラインの基点は、200Vくらい?

などと、制約条件をアタマに思い描いて、あーだーこーだと、ロードラインを引きます。何本も引いて、納得できるロードラインを探します。



結果的には、【B電圧】223Vから、デカップリング抵抗4.7KΩで16V電圧降下した206.75V点から、負荷27kΩでロードラインを引きました。
特性図ですと、バイアス分を引いた204Vの所となります。 


結局、プレート電圧150V、プレート電流2mA、バイアス-2.75V、
負荷抵抗27KΩ、カソード抵抗1.3KΩ に決定しました。

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【電源平滑部】の設計

まず、電源トランスの出力電圧を予想します。
今回の回路ですと1.32倍と仮定して出力電圧は257.5Vとしました。

この出力電圧から、【B電圧】223Vを引いて、回路の総電流41mAで割れば、電源平滑部の抵抗値が求まります。

(257.5V-223V)/0.041A = 841.5Ω

よって、電源部の抵抗は、470Ω390Ωにしました。



以上の結果から、回路図を書きます。
完成した回路図は、下掲載のとおりです。

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( ※注 上記回路図は、出力トランス二次側アースが抜けてます。
      すみません。。。(汗  )



次回は、ゲイン配分の確認と、最大出力の計算をご紹介する予定です。

(次回につづく)