真空管ヘッドフォンアンプいろいろ その32011/04/02 10:58

先日、E81Lチェレステ色ヘッドフォンアンプを、春日無線に置いてきたのですが、その時に、『 ブログを開設したけど、書く事がない! 』という話をしたら。。。

『 ロードラインの引き方を書けば?
 いつも、ミクシィ日記で書いてるでしょ? 

 ロードラインの引き方を解説したミクシィ過去日記を、
 ブログにコピーすれば良いだけの話では?
 』

というアドバイスを頂きました。

それで今後、ブログでロードラインの引き方の解説記事を書こうと思うのですけど、どうやって書いていくかちょっと考えてみます。
それまでは、過去に作ったアンプのご紹介で、ネタを繋ぎます。


。。。という訳で、真空管ヘッドフォンアンプいろいろ 第三弾いきます。

以下の写真は、趣味で作った真空管アンプとフィギュアの写真です。
フィギュアとか苦手な人は、くれぐれも見ないようにお願い致します。



いやホント、すみません。。。(汗



春日無線6AU8Aアンプキット改造 (ヘッドフォン/スピーカー両用)
アルター製 XenosagaⅢ KOS-MOS Ver.4
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6DJ8-33-6X4シングル (ヘッドフォン/スピーカー両用)
マックスファクトリー 涼宮ハルヒの憂鬱 長門有希
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12SL7-1626シングル (ヘッドフォン/スピーカー両用)
クレイズ グレース 宮沢模型流通限定品パステル・ブルーVer.
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6414-6463パラ シングル (ヘッドフォン/スピーカー両用)
コトブキヤ 狼と香辛料 ホロ
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6414-PCL86(五極部のみ使用)シングル (ヘッドフォン/スピーカー)
コトブキヤ ゼロの使い魔 ルイズ
クリック


WE408A-1626シングル (ヘッドフォン/スピーカー両用)
ウェーブ 夜明け前より瑠璃色な 朝霧麻衣
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どうもお目汚し失礼しましたっ!


クラシックレンズいろいろ2011/04/04 12:15

真空管アンプ初心者のために、ロードラインの引き方について記事を書こうかな?と思い、過去に書いたミクシィ日記を検索しています。

それで以前に書いた日記を物色していて、面白そうな話題を発見したので、ご紹介致します。

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左は、おロシア・レンズ ミール20mmF3.5 (M42マウント)
右は、ライツ・カナダ製 ズミクロンR 50mmF2 (ライカRマウント)

上記のレンズを使用した作例を、ご紹介致します。

おっと、その前に私がいつも使用しているデジカメを、ご紹介しなければ!

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パナソニック製 初代ルミックスF7。
今どき信じられない、200万画素のコンパクトデジカメです。
2002年に購入したので、9年間使用しています。

CCDの画素数が少ない代わりに、一画素あたりの受光面積が大きいせいか色飽和度が高くて、屋内の光量が少ない条件でも色ノリが良いので愛用しています。

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当時のデジカメの中では、かなり色がこってりと乗る描写でした。

2台を併用しながら、何回か修理に出して9年間使用していましたが、
さすがに一台は昇天しました。
残りの一台は、いまだ現役で、『E81Lヘッドフォンアンプ製作サイト』の写真や、フィギュアを載せた真空管アンプの写真は、すべてルミックスF7の200万画素で撮影しています。


パナソニック製 初代ルミックスF7 (200万画素)
アルター製 ChuChuアイドる チューア・チュラム
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さて、それでは本題に戻りまして、おロシアレンズを、
M42 → フォーサーズ  マウント・アダプター (東欧製) を使用して、
デジカメに装着します。

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上記のカメラで撮影した画像は、こちら(↓)。

オリンパスE-300 + MC-MIR 20mmF3.5 (ロシア製)
アルター製 ChuChuアイドる チューア・チュラム
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コンパクトデジカメは一般的にビビットな発色しますけど、それに比べると、
東欧とかロシア製レンズは、色ノリが淡くて柔らかい描写ですね。


一方、 ライカR → フォーサーズ  マウント・アダプター (東欧製)
を使用して、ライツ・カナダ製 ズミクロンR 50mmF2 をデジカメに
装着するとこんな感じになります。

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上記のカメラで撮影した画像は、こちら(↓)。


オリンパスE-300 + ライツ・カナダ製 ズミクロンR 50mmF2
マックスファクトリー 涼宮ハルヒの憂鬱 涼宮ハルヒ激奏Ver.
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ライツ・カナダ製 ズミクロンR 50mmF2 はすごく質感描写に優れる
名玉レンズですけど、デジカメで撮影→画像を縮小→JPEG圧縮してしまうと、別にフツーの描写になってしまうかも。。。(汗


まあ、とりあえず、ちょっとした話題を提供しました!と言う事で。。。



EL32か、PCL86か。。。2011/04/05 09:03

真空管アンプ初心者のために、ロードラインの引き方について記事を書こうと思います。
それで、サンプルにするアンプを2機種ほど絞り込んだのですけど。。。



候補の一台は、6N2PEV-EL32(VT52)シングル
GEカナダ製のEL32(VT52)は、いろいろなサイトでも取り上げられてて、
真空管アンプビルダーの間では割と有名かな?と思いました。
現在も、秋葉原のサンエイで一本千円で入手できるようですし。。。

あと、初段の6N2PEVも、12AX7相当管ですので、
12AX7が手持ちにある人も沢山いるかと思って。。。


6N2PEV-EL32(VT52)シングル (ヘッドフォン/スピーカー両用)
グッドスマイルカンパニー ねんどろいど フランチェスカ・ルッキーニ
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もう一台の候補は、6414-PCL86シングルです。

説明不要のPCL86ですけど、五極部のみ使用して三極部は使用していません。三極部は12AX7相当ですので内部抵抗が大きいので。。。

欧州系五極管が、一本450円で売っている!と、脳内に補正をかけて、
内部抵抗の低い6414でドライブします。
もちろん、6DJ8あたりでも可です。
もともと、PCL86の五極部は感度が高いので、μ30くらいで充分ドライブできます。

余った12AX7相当の三極部は、真空管抵抗負荷(SRPP)とか、
NFB素子の代用とか、各自で考えてみると面白いかもしれません。



6414-PCL86(五極部のみ使用)シングル (ヘッドフォン/スピーカー)
コトブキヤ 夜明け前より瑠璃色な エステル・フリージア
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それで、どっちにするかいろいろ考えたのですけど、
結局、オーソドックスにPCL86にする事にしました。
なんか、またかよという声が聞こえてきそうですけど。。。(大汗


GEカナダ製EL32(VT52)は秋葉原で入手できますけど、通販ではなかったような気がするので、地方にお住まいの方は入手できないのでは?と、ちょっと思いました。
あと、なにげにグリッドキャップが高価なのでEL32(VT52)真空管本体は安価でも、グリッドキャップ代金がプラスされてしまうという罠があります。



とりあえず、次回から6414-PCL86シングルで、
ヘッドフォンアンプ兼用の、スピーカー出力ミニアンプ製作の説明、
主にロードラインの引き方について解説していこうかな?と思っています。



6414-PCL86ロードラインの引き方(1)2011/04/07 14:13

初心者のために、真空管アンプ設計のロードラインの引き方を解説していこうと思います。

いちおう、真空管アンプキットラ技/MJ等の回路を製作した事があるけど、ロードラインを引いてオリジナルのアンプを製作するまでにはいかない。
というレベルを想定しています。

春日無線の店頭で雑談していると、『けっこう沢山の人がロードライン引けなくて、みんなそこで引っかかるんだよね。』みたいな事をよく聞くので、
ロードラインの引き方について、簡単に説明しようと思います。

真空管特性図三定数(gm、μ、rp)等が判らない人は、
木村哲著 情熱の真空管アンプ 等の書籍で、まずは自習してください。
http://www.amazon.co.jp/dp/4534037406

さすがに、ブログで最初から説明するのは無理です。。。(汗

ちなみに、上記の内容はネット上でも公開されていますけど、
http://www.op316.com/tubes/tips/tips0.htm
書籍を購入すれば印税が著者に入るので、著者に敬意を表して書籍を購入した方が良いのでは?とか個人的には思います。
ネット上のマニュアルを読んで、内容に納得したら書籍を購入する。
みたいな感じでしょうか???

まあ、そのあたりの判断は各自の自由です。。。(汗


本題に戻ります。。。


6414-PCL86シングルですけど、PCL86のヒーター電圧が14.5Vなので、春日無線の電源トランスKmB-90T/90Fの使用を想定します。
http://www.e-kasuga.net/goods.asp?id=838
トランスのヒーター端子が、0V-6.3V-12.6V-14.5V AC 0.9Aで、
そのうち0.6Aが、PCL86で消費されるので、0.3Aが余ります

その余った0.3Aを利用して、低内部抵抗カスコード管コンピューター管で、PCL86の五極部をドライブしよう!というのが今回のアンプのコンセプトです。

300mAシリーズの球ですから、使用できるのは、
12.6V 0.3A 以下の球
6.3V 0.3A 以下の球
になります。

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6414は12V点火して、12.6V 0.225A として使用します。
6DJ8系ですと300mAシリーズの、69227DJ8あたりになります。



さて、一方のPCL86ですけど、
五極部の三結特性図は、サイドコンタクト球EL3三結特性図を使用します。
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/046/e/EL3.pdf

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長島氏が設計した春日無線の旧PCL86アンプは、
http://www.e-kasuga.net/amp_pdf1/PCL86-ST.pdf
EL3三結代表特性の、
プレート電圧250V、プレート電流20mA、バイアス-8.5V、負荷7KΩ、
カソード抵抗425Ω 
を参考にしているので負荷7KΩ、カソード抵抗が430Ωだったりします。

ネット上には、『 JK1EYP真空管アンプの自作 』サイト様の
http://park21.wakwak.com/~eyp/jk1eyp/amp/PCL86main/PCL86_DATA/PCL86data.htm
PCL86三結特性実測図がありますけど、上記のEL3三結特性図と、
ポイントをいくつかピックアップして比較してみると、よく一致するので、
私個人は、EL3三結特性図を使用しています。



今回の6414-PCL86シングルの出力段PCL86(T)の動作条件は、

プレート電圧210V、プレート電流17mA、バイアス-7V、
負荷7KΩ、カソード抵抗430Ω 


ですけど、試しに両方の特性図に、上記の動作点、
プレート電圧210V、プレート電流17mAをプロットしてみれば、どちらのグラフでも-7Vバイアス線が通るという事が確認できると思います。

このあたりの話は、真空管アンプ製作ベテランの方々は良く知っている所なのですけど、初心者の方はあまりご存じないかと思って書きました。


例えば、6922-PCL86(五極部のみ使用)のアンプを製作すれば、
それはつまり、6DJ8-EL3アンプなんだ!?
と、脳内で妄想すると製作意欲が湧くかもしれません。。。(汗


それでは、次回は実際の設計を書きたいと思います。

(次回につづく)

スパム防止のクイズ認証2011/04/09 04:53

スパム防止の為に、コメント入力時の質問(クイズ認証)を設定しました。


【 質問 】

14GW8の欧州名は『pcl86』ですが、
6CH6 の欧州名はなんでしょう?
(半角小文字で入力)




答えは、コレ(↓)

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安価で音の良い真空管は、
1626、PCL86、EL91、A2134 と、6CH6(CV4055)
くらいなモノなので、このブログに来られる真空管アンプを自作する方には楽勝だと思います。

まあ、他にもいろいろありますけど、
パッと思いつく真空管はその辺りです。

ああっ!

あと、E81Lも良い球です、もちろん!!

こうして改めて考えると 1626 以外は欧州管なので、
やっぱ欧州管は良い!
という所なのでしょうか?。。。(汗




6414-PCL86ロードラインの引き方(2)2011/04/10 14:17

先日、PCL86の五極部はEL3みたいな?ことを書きましたけど。。。

長島氏が設計した春日無線の旧PCL86アンプついては、
http://www.e-kasuga.net/amp_pdf1/PCL86-ST.pdf
ラジオ技術誌2003年1月号に掲載されています。

とはいえ、近年に真空管アンプの世界に参入された初心者の方々は、
上記雑誌を閲覧する機会がないと思います。

技術的資料価値(!)があると考えますので、ちょろっと掲載します。
ただし、著作権とかで問題があるかもしれないので、
全4ページのうち、冒頭2ページだけです。。。

今度、春日無線に行って、店長や長島氏にお会いした時に、
全ページ掲載して良いものなのか聞いてみます。すみません。。。(汗

また、下掲載のラ技記事は、予告なく削除する場合があります。
ご了承ください。


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上記ラジオ技術の記事を読むと、長島氏は、
AL4 → EL3 → EL33 →→ EL83 → PCL86(五極部)
と推察しているようです。

前にも書いたとおり、出力段五極部の動作は、EL3三結代表特性の、
プレート電圧250V、プレート電流20mA、バイアス-8.5V、負荷7KΩ、
カソード抵抗425Ω 
を参考にしているので負荷7KΩ、カソード抵抗が430Ωです。



さて、本題の6414-PCL86シングルの話に戻ります。


今回の6414-PCL86シングルの出力段PCL86(T)の動作条件は、
プレート電圧210V、プレート電流17mA、バイアス-7V、
負荷7KΩ、カソード抵抗430Ω 

この動作点は、春日無線の旧PCL86アンプの動作点を参考にしています。というか、ほとんど同じです。。。(汗


ですけど、ロードラインを引く為の思考手順を、ちょっと書いてみます。


真空管アンプの製作費は、トランス類で決まってしまうので、
まず最初に使用するトランスを決めてしまいます。

もし仮に、真空管の動作を先に決めてしまって、
それに合わせてトランス類を選定すると、製作費はどんどん高くなります。

例えば、PCL86の動作をEL3三結代表特性の、
プレート電圧250V、プレート電流20mA、バイアス-8.5V、負荷7KΩ、
カソード抵抗425Ω 

で、製作するという事になれば、それに合わせてトランス類を選定する事になるかと思います。
だぶん、出力トランスは、KA-5730クラスになって、
250V出力の電源トランスは、特注品で単品製作になるかと。。。
アンプ実装規模(シャーシの大きさ)も、一回り大きくなりシャーシ代も高くなるので、たぶん価格差は、一万円以上ではないでしょうか?



今回の、6414-PCL86シングルは、なるべくコストを抑えたいので、
トランスは、KmB90T/F、OUT41-357を使用する!
と決めてしまって、それに合わせてロードラインを検討していきます。

KmB90T/Fトランス 出力電圧195V 許容電流80mA 80mA×0.64=51.2mAですので、
ブリッジ整流の場合の電源トランス許容電流は、約50mAです。
一方、OUT41-357出力トランスの許容電流は、20mAです。

出力トランスの許容電流が20mAですから球のバラツキを考慮すれば、
回路に流すプレート電流は17mAくらいでしょうか?

以上の事から、特性図にプレート電流17mAのラインを引いて、
電源トランスの出力電圧195Vですから、だいたい200V周辺のプレート電圧の交点付近で、ちょうどバイアス線が通る所を探します。

そうすると、
プレート電圧210V、プレート電流17mA、バイアス-7V
あたりが良さそうだという事になります。

PCL86五極部の三結時内部抵抗は3KΩくらいですので、その2倍は6KΩですけど、出力トランス端子に6KΩはないので7KΩのロードラインを引いてみます。

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上記のロードラインと、ゼロバイアス線との交点のプレート電流は、33.5mAくらいなので、その1/2は、16.75mAですので、
どうやら電力効率最大の動作点と、それほど差異はないようです。

以上の思考手順で、動作点は上記のポイントに決定しました。

あと、これはオマケなのですけど、
もっと製作費を安くしたい!という方の為に参考で書きたいと思います。

以前に製作した、6922-5687アンプで使用した
http://valvolerosso.asablo.jp/blog/2011/03/27/5761264
ラジオ少年BT-2V電源トランスは、1700円なので、
これと、OUT41-357Sタイプ出力トランスを組み合わせば、
アンプの規模は、6922-5687アンプと同じになると思うので、
製作費は、球なし価格で一万円くらいのハズです。。。(汗

ちなみに、PCL86のヒーターは、6.3Vシリーズ接続の12.6Vで点火することになりますけど。。。(汗

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トランスは、BT-2V、OUT41-357Sタイプを使用する!
と決めてしまって、それに合わせてロードラインを検討します。

BT-2Vトランス 出力電圧160V 許容電流60mA 60mA×0.64=38.4mAですので、
ブリッジ整流の場合の電源トランス許容電流は、約38mAです。
一方、OUT41-357Sタイプ出力トランスの許容電流は、15mAです。

出力トランスの許容電流が15mAですから球のバラツキを考慮すれば、
回路に流すプレート電流は12.5mAくらいでしょうか?

以上の事から、特性図にプレート電流12.5mAのラインを引いて、
電源トランスの出力電圧160Vですから、だいたい160V周辺のプレート電圧の交点付近で、ちょうどバイアス線が通る所を探します。

そうすると、
プレート電圧155V、プレート電流12.5mA、バイアス-5V
あたりが良さそうだという事になります。


掲載した特性図には、そちらの方の動作点も記載してあるので参考にして下さい。

次回は、6414の初段部分の説明をしたいと思います。

(次回につづく)


6414-PCL86ロードラインの引き方(3)2011/04/11 10:17

引き続き、6414-PCL86シングルの設計です。


【出力段】の設計


前回は、出力段の動作を決定しました。

出力段の動作点が決定したら、後は【B電圧】を求めます。

プレート電圧210Vにバイアス電圧7Vを加えた、
対アース電圧のプレート電圧217Vに、
出力トランス直流抵抗(DCR)電圧降下分を、さらに加えたものが、
【B電圧】です。

春日製OUT41-357の出力トランス一次側/直流抵抗(DCR)は、
330Ωですので、電圧降下は、

(プレート電流)0.017A×(DCR)330Ω = 5.6V

217V+5.6V= 222.6V

およそ、223Vです。

これが、いわゆる【B電圧】で、これを求めないと設計できないという、
回路のキモです。


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【初段】の設計

 初段設計の際は、以下の制約があります。

 a.デカップリング時定数は、段間の時定数よりも、充分大きいのが
   望ましい。
ただし、三段増幅と違って、シングル二段増幅は、
   初段と出力段の位相が逆で、電源発振しないのでデカップリング
   にあまり神経質になることはないと思います。
       NFB量が-6dB以下でしたら、デカップリング抵抗は、
   3K~十数KΩくらいで常識的な数値なら問題ないのでは?。。。(汗

 b.負荷抵抗は、真空管の内部抵抗よりも大きくなければならない。
   バイアスが深くなると内部抵抗は増加するので、
   通常、負荷抵抗は、動作点内部抵抗の2倍以上とるようですけど、
   rp=80KΩの12AX7の負荷が100KΩなどはよくある事なので、
   特に2倍以上と決まっている訳ではないようです。。。(汗

 c.バイアス-1V以下は、初速度電流領域なので使用しない。


負荷抵抗は、安い1Wカーボン抵抗を使用したいので、ワッテージのディレーティングを考慮すれば、流せる電流は2mA位でしょうか?
6414特性図の2mAあたりの内部抵抗は18kΩくらいですし、ゲインはいらなそうなので、負荷は30kΩくらい?
段間の時定数は、0.47×0.068=0.032なので、10倍取ると0.3
0.3を47μF割れば、6.4kΩなので、デカップリング抵抗は、それくらいにしたい所です。
6.4kΩの3.5mAの電圧降下は、22.4V。
それでは、とりあえずデカップリングで、20V電圧降下させたとすると。。。
ロードラインの基点は、200Vくらい?

などと、制約条件をアタマに思い描いて、あーだーこーだと、ロードラインを引きます。何本も引いて、納得できるロードラインを探します。



結果的には、【B電圧】223Vから、デカップリング抵抗4.7KΩで16V電圧降下した206.75V点から、負荷27kΩでロードラインを引きました。
特性図ですと、バイアス分を引いた204Vの所となります。 


結局、プレート電圧150V、プレート電流2mA、バイアス-2.75V、
負荷抵抗27KΩ、カソード抵抗1.3KΩ に決定しました。

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【電源平滑部】の設計

まず、電源トランスの出力電圧を予想します。
今回の回路ですと1.32倍と仮定して出力電圧は257.5Vとしました。

この出力電圧から、【B電圧】223Vを引いて、回路の総電流41mAで割れば、電源平滑部の抵抗値が求まります。

(257.5V-223V)/0.041A = 841.5Ω

よって、電源部の抵抗は、470Ω390Ωにしました。



以上の結果から、回路図を書きます。
完成した回路図は、下掲載のとおりです。

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( ※注 上記回路図は、出力トランス二次側アースが抜けてます。
      すみません。。。(汗  )



次回は、ゲイン配分の確認と、最大出力の計算をご紹介する予定です。

(次回につづく)


6414-PCL86ロードラインの引き方(4)2011/04/13 09:02

前回の日記で、回路図が完成しました。

次に回路のゲイン配分最大出力を確認します。

これを実施しておかないとNFBを掛けたら出力段バイアスをフルスイングできなくなった!という事が起こりがちです。
私自身、何度も経験しました。。。(汗


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さて、初段の動作条件は、

プレート電圧150V、プレート電流2mA、バイアス-2.75V、
負荷抵抗27KΩ、カソード抵抗1.3KΩ 

でしたので、とりあえず、グラフが読みやすいように、
初段を±1.25Vスイングさせると、
基準のバイアス-2.75Vを中心にして、
ロードライン上の、バイアス-1.5Vから-4Vまでスイングします。


その時の、電圧の変化量は、

ゼロバイアス側 → 150V-119V=31V
カットオフ側   → 173V-150V=23V

特性曲線の右下のバイアスの間隔が詰まっているので、
カットオフ側【23V側】は、どん詰まりになって、
このように歪む訳です。(←二次歪みの発生)

シングル二段増幅は、初段と出力段の位相が逆になるので、このどん詰まりの【23V側】は、出力段のゼロバイアス側をスイングする事になります。(←コレ重要)


出力段のバイアスは、-7Vですので、
7Vを23Vで、割ると、7÷23V=0.304 

まあなんと言いますか、アタマの中で仮に、NFBが掛かって初段のゲインが、0.304倍になった。とでも考えて下さい。
初段のゲインは変化しないのですけど、便宜上そう考えて下さい。。。(汗


んで、初段のゼロバイアス側【31V側】は、
31V×0.304=9.42V

となり、

NFBがかかって、初段のゲインが、0.304倍されたと想像すると。。。

出力段のゼロバイアス側は、23V×0.304=7V
出力段のカットオフ側は、  31V×0.304=9.42V

となって、初段をワザと歪ませると、出力段のバイアスを、カットオフ側に-9.42V。
つまり、2.42V分を余計に、オーバー・スイングしてくれる訳です。


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通常の場合ですと、出力段の最大出力は、

298V-93V=205V
205V÷2√2=72.5V
72.5^2÷7000Ω=0.75W
計算上の出力は、0.75W ですけど、

初段を歪ませて、オーパースイングさせると、
カットオフ側のバイアスは、7V+9.42V=16.42Vまで振り込むので、
およそバイアスを-16Vまでスイングさせたとすると、

315V-93V=222V
222V÷2√2=78.5V
78.5^2÷7000Ω=0.88W

と、なって、出力段の歪みと出力が改善されて、最大出力は、0.88W となります。

これが、いわゆる
“ シングル二段増幅における二次歪みの打ち消しテクニック ”
です。

打ち消すと言うよりも、遊び電流を活用して設計動作点を超えて、オーバー・スイングさせる(振り込ませる)イメージが近いと思うのですけど。。。

最初に仮定した初段入力電圧の、±1.25Vは、ピーク値ですから、

1.25V÷√2=0.88Vrms(実効値)

0.304倍のNFBは、おおよそ-10.4dBですので、

入力0.88Vrms、NFB-10.4dBで、
フルパワー0.88Wというアンプになるでしょうか?

実際には、NFBを-10dBも掛けません。
あまり掛けすぎると、高域補正や、厳密な時定数の検討(スタガリング)が必要になりますので、実際には-6dB前後にします。

あくまで、NFBを掛けても出力段バイアスがフルスイングできるという事を確認する訳です。



アンプ設計のゲイン配分最大出力の検討は、こんな感じです。。。(汗

非常に簡単な説明で恐縮ですが、ご理解頂けたでしょうか???



次回は、実際のアンプ製作を、簡単にご紹介する予定です。

(次回につづく)


6414-PCL86ロードラインの引き方(5)2011/04/13 09:21

6414-PCL86アンプの製作工程を、簡単にご紹介します。

真空管アンプの製作には、私はいつもタカチのYMS-200シャーシを使用しています。
ステンレス鏡面仕上げで、フィギュアを飾るとカッコイイですし、なんといっても安価なのが良いです。(2,500円くらい?)

けれども、加工の難易度はもの凄く高いです。
とても初心者には、オススメできません。。。(汗

特に、今回のアンプは、春日製KmB-90F伏せ形トランスを使用する予定でしたので、四角穴を開けなければなりませんでした。

ステンレスに四角穴が開けられるのか判らなかったですけど、
とりあえずチャレンジしてみました。


まずは、秘密兵器を製作しました。

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楽天市場で鉄パイプのカット材を購入して、ハンドニブラーの取手の長さを延長します。
これでかなり力が入ります。


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ステンレスは、とてもとても固いのですが、
ガジガジとひたすら囓っていきます。

これはもう、技術以前に、根性あるのみです。

ちなみに、ハンドニブラーで四角穴を開ける時は、
あらかじめ四隅に、隅R半径の穴を開けておきます。
ハンドニブラーで、その穴同士を繋げていくような感じでしょうか?
従って、完成した時の仕上がりは、隅部にRが付く事になります。



完成すれば!の話ですけど。。。(汗


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半分も加工しないうちに、刃が折れました。。。(汗

その後、刃を交換したのですけど、さっぱりダメでした。
ハンドニブラーの内部機構が変形して加工できなくなりました。
つまり、ハンドニブラーが壊れました。。。(汗

仕方ないので、金属機械加工業者をネットで捜して、
ステンレスの四角穴加工をしてもらう事に決定。

実際に、加工業者に出向いて加工方法を打ち合わせしました。

もうすでに四隅に穴が開いているので、現物合わせで四箇所の穴をフライス加工で繋げて四角穴を開けてもらう事になりました。


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仕上がりは、さすがプロの仕事です。
かなり綺麗に四角穴が開きました!



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四角穴だけを業者にお願いして、その他の丸穴加工は自分で開けました。



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電源トランス、ソケット、アクリルステージなどの外装部品を組み立てます。



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電源のコンデンサインプット一段目、平滑抵抗、ヒーター配線をハンダ付けします。




AC100Vライン、ダイオードブリッジ、電解コンデンサー、デカップリング抵抗などをハンダ付けします。



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B電圧ライン、プレート回路、スクリーン回路をハンダ付けします。



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初段は独立電源です。
電源のコンデンサーのマイナス端子から独立してアースを引いているのが判ります。
デカップリング抵抗と電解コンも左右別にします。
こうすると、初段の音声交流信号は、独立してループします。



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ハンダ付けが終了しました!
この後、各部の電圧を測定してチェックします。



なお、このアンプを製作したのは、2009年10月頃でした。
つまり、この記事の内容は、一年半前の出来事です。

ちなみに、現在、春日無線では、
KmB-90Tみたいな、黒カバー/リード出しトランスが特注できます。
http://www.e-kasuga.net/goods.asp?id=838


黒カバー/リード出し電源トランスが購入できるのなら、
シャーシに四角穴を開ける必要はまったくありません!


あの無茶苦茶大変だった苦労は、いったいなんだったのでしょう???


。。。。。とほほ。



さて、次回は、製作したアンプの各部の電圧実測値と修正した回路図を、
ご紹介する予定です。

(次回につづく)


6414-PCL86ロードラインの引き方(6)2011/04/15 11:10

6414-PCL86真空管アンプ製作の続きです。

ハンダ付けが終了したPCL86アンプは、
各部の電圧値を測定して、設計通りに動作しているかチェックします。

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あと、各部の電圧値をチェックしながら、
感電しないように注意して、軽く抵抗に触れて発熱を確認します。

ブリーダー抵抗が、かなり熱いです。。。(汗

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PCL86アンプのブリーダー抵抗100KΩ2Wで、ディレーティング4倍を取ってるんですけど、かなりアッチッチ状態なので3Wの抵抗に付け替えました。
アッチッチ状態をほっとくと、シャーシ内の温度が高くなるので抵抗の表面温度は、全体的に低めにしといた方がよろしいかと思います。


書籍『情熱の真空管』とかに、抵抗のディレーティングは4倍とか書いてありますけど、実際の所、4倍だと触れられないくらいに熱くなります。
私個人は、最低でも6倍、余裕がある時は8~10倍とっています。



測定した電圧値を回路図に記載します。

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上掲載の回路図の、赤字が設計値で、青字が実測値です。

電源の電解コンデンサー、ブリーダー抵抗、初段カソード抵抗、出力段パスコンなどのパーツが、当初の設計から変更になっています。
主に、手持ちパーツを流用した結果です。


全体的に見ると、やっぱり電源トランスの出力電圧が高めです。

ダイオード整流後の出力電圧が、263.2Vですから、端子電圧195Vの1.349倍です。
もっとも195V端子の出力自体が高めで、203Vくらいの出力が出ています。(ちなみに我が家の100Vコンセントの出力は、100.5Vで、ほぼ100Vです。)

春日無線の電源トランスはコアに余裕があるのか、出力電圧はいつも高めに出ます。
それを見越して、電源トランスの出力電圧を×1.32倍で設計したのですが、それよりもさらに高くなる結果になりました。


手持ちの抵抗の関係で、電源平滑部の抵抗は、
680Ω10W+220Ω3Wを投入したのですが、
それでもB電圧は225.3Vと設計値の223Vよりも2.3Vくらい高いです。まあ、2.3Vくらいだったら手直ししなくてもOKかと思います。

このアンプを製作したのは、2009年の10月ですので、
一年半が経過した現在、あらためてこのアンプを見ると、
いろいろ改善した方が良いような気もします。

電源の抵抗なんかは、220Ω3W×3個/300Ω5W 一個の、合計960Ωくらいにするとか。。。
ブリーダー抵抗は、デカップリングの末端で左右別に2個使用してますけど、電源に入れて一個に減らす。とか。。。

そのうちに、修正しようかな?と、ちょっと思いました。。。(汗


次回は、初段を 12AX7 → 6414 に変更した事の効果
初段の出力インピーダンスの変化について書きたいと思います。 

(次回につづく)


。。。。。



(おまけ)

お好きな方だけどうぞ。。。(汗

以下の写真は、趣味で作った真空管アンプとフィギュアの写真です。
フィギュアとか苦手な人は、くれぐれも見ないようにお願い致します。


6414-PCL86(五極部のみ使用)シングル(ヘッドフォン/スピーカー)
オーキッドシード スク水メカナース少女ナナ
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通常、フィギュアは組立済みの完成品状態なのですが、
なかには自分で組立をしなければならないフィギュアもあります。
スク水メカナース少女ナナも、組立しなければなりませんでした。
まるでガンプラです。。。(汗

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苦心の末、組立が完成した状態です。
ストライクガ○ダムみたいで、カッコイイです。(おい)

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フィギュアの造形は、駒都えーじ氏のイラストを元にしています。

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お目汚し失礼しましたっ!